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ぼくたちの終わらない夏/クリストファー・ライス

2002年01月24日(木)
20020124
ぼくたちの終わらない夏(B+)/クリストファー・ライス
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1)冒頭の書き出しはなかなかいい。ジャンルはヤングアダルトだと思っていたけれど、これってミステリー?と思わせるような、ちょっとゾクゾクした感じ。と思いきや、えっ!ホモ小説?な、なんですって!?とびっくり。

男の子3人、女の子1人の幼馴染が成長していく過程で、さまざまな事件が起こる。その根底に流れているものはやっぱり同性愛というテーマなのだろうか?かといって、そのことが特にクローズアップされているわけでもない。1つの事件に対して4人それぞれの、そのときの状況が克明に描かれている。また、彼らの家族や周囲の人たちについても。場面がころころと変わり、現在と過去を行ったり来たりする小説はよくあるが、これは年代を追って順に書いてあるので、登場人物の多さに比べて混乱は少ない。


2)後半に入り、いよいよ物語も核心にふれてきた。やはりメインのテーマは同性愛というか、ホモ?赤裸々な描写もあるのだけれど、それがあまりえげつなくならないのは、割と淡々とした語り口で、事件を克明に描写することを心がけているせいだろうか?

あまり作者の感情というものは見受けられないが、登場人物ひとりひとりの苦しみや悲しみが、よく表現されている。たたみかけるように語られる物語は、次から次へとページをめくらせる力がある。

しかし、男の子たちの苦悩と共にあるのが母親たちの苦悩だ。ホモという状況を描くのも結構難しいだろうと思ったが、クリストファー・ライスはアン・ライスの息子で、クリストファーにも母親の影響は大きいのだろう。アン・ライスのデビュー作も、バンパイアものだけれど、たしか同性愛を描いていたのではなかったっけ?アン・ライスの息子であるということで、その資質を受け継いでいるとも思えるし、小説を書く環境に恵まれているとも思える。


3)本の好みは人それぞれなので、普段はめったに「おすすめの本」というのは口にしないのだけど、この本はぜひ読んでみて欲しい本だと思った。

ホモやゲイといったテーマなのだが(同性愛についてはここではノーコメントにしておくが)、とにかくよく書かれている。23歳のデビュー作とは思えない、見事なストーリー・テリングだと思う。一度も退屈な部分がなかったのは賞賛に値する。母親譲りの神秘的なイメージと、ミステリーの謎解きとを合わせ持ったこの物語は、淡々と描かれていながらも、作者自身の心の苦悩をあらわしたハイスクール時代の描写がきめ細かく生き生きとしていて、涙さえ誘う。

しかしポイントは、大人になるにつれて周囲がみな屈折していくのに、おそらく著者の分身であろうと思われる主人公だけは現実をしっかり受け止めながらも、何も変わらないことだ。それが今時のポストモダン的な小説とは大きく異なる部分。だいたいは主人公が暴力やドラッグなどに染まり、わざと行儀の悪い生き方をしているような話の多い、ポストモダン小説嫌いの私にとっては驚きでもあり、新鮮でもあり、23歳の今時の若者がこのような小説を書いたことを、非常に嬉しくも思った。

物語は4人の幼馴染みの人生だけでなく、彼らの周囲の人間の人生までも描き出しており、それぞれの年代の苦悩というものもわかる。若干23歳にして、鋭い洞察力だ。もしかしたら、著者自身がいじめられ、悩み、苦しんだ結果なのかもしれない。

余談だけれど、登場する男の子が例えどうしようもない不良でも憎めず、みな魅力的なのは、著者自身が同性愛者のせいなのだろうか?



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